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Training Drill
友岡和彦の競技者のためのトレーニングドリル
第19
回 「パワートレーニング ―コンプレックストレーニング―」


パワートレーニング
―――コンプレックストレーニング―――

 今回はパワー向上のためのひとつのトレーニング方法、コンプレックストレーニングについて紹介したいと思います。以前トレーニングガイドで説明したように、最大限のパワーをつけるためには、その前の土台となる最大筋力を上げておく必要があります。最大筋力が強いほど、パワーへの変換も多く期待することができるからです。また、パワーは、単なる筋力とは違って、短時間でどれだけの力を発揮できるかという能力です。つまりパワー = 力 x スピードで表すこともできます。つまり、パワーは筋力をあげても、それに伴うスピードが遅ければパワーの向上にはなりません。そのため、最大筋力をしっかりとつけた段階で、今度はスピードをつけたトレーニングを行うようにしなければいけません。あるリサーチによると、パワー向上のためには最大挙重量の30%の重さを用いて、スピードをつけたトレーニングをすることが効果的だと言う文献が出てします。また、ほかの文献では、マックスに近いウェイトを用いたトレーニングが、速筋をさらに刺激するため、パワーの向上にさらに効果的だと述べているものもあります。いずれにせよ、しっかりとしたピリオダイゼーション(トレーニング計画)を組んで、基礎筋力(筋持久力)、筋肥大、最大筋力、そして、プライオメトリックス(ジャンプトレーニング)などによるパワーの向上が必要になってきます。

 そして、さらにこれまでしっかりと正しいトレーニングを積んできて、さらに競技力向上のためのパワートレーニングに変化を持たせるために、コンプレックストレーニングを行っている選手も多くいます。実際私の働いているエクスポズでも、シーズン中には種目数を少なくして、コンプレックストレーニングを行っているピッチャーや野手もいます。このトレーニングをさらに効果的に行うためには、何を目的として行っているのかをしっかりと選手とのコミュニケーションをとる必要があります。ここで、繰り返しになりますが、このトレーニングで最も効果があるのは、これまでしっかりとしたトレーニング経験のある選手であり、このトレーニングをやみくもにトレーニングの初期段階で使うことによって、傷害につながる可能性もあるので注意するようにしてください。コンプレックストレーニングとは、神経系の興奮を促すドリルと、さらにそれを補うトレーニング(競技力向上のために)としてジャンプスプリントなどの瞬発的なドリルを組み合わせたトレーニング方法です。一般的には、重いウェイト(スクワット、ベンチプレスなどでマックスの85−95%の重さ)を2−6回上げたすぐあとに、そのドリルと似た、今度はさらに競技動作に近い動作を行い、これを1セットとします。つまり、重いものを持ち上げることによって、速筋に刺激を与えて興奮状態にさせ、そのすぐ後に今度は競技中で起こる似た動作をトレーニングすることによって、通常行う以上に、さらに速筋繊維を用いてその動作を素早い動きで行うことが可能になります。そして、これによって、競技動作においてパワーの向上を図ることが目的となります。つまり、筋力だけをトレーニングするのではなく、競技上の動作を興奮状態にある神経系を用いて、効率的に動作を行えるようにトレーニングを行います。この神経系上の変化は、2−5分ほど続くといわれていますが(Brandon Marcello)、最終的には、この変化をできるだけ維持させるようにするのを目標となります。

トレーニング方法
時期 パワーへの変換期、シーズン直前、またはシーズン中のピーク期直前
期間 最大筋力、またパワートレーニング後の3−6週間
頻度 シーズン前 週2回、シーズン中 週1−2回
セット マックスの85−95%の重さを使って、2−6回の重さを上げます。このとき過度筋肉を過度に疲れさせないようにします(疲労が起こると、神経系の活動が鈍くなるため)。その30秒以内にジャンプ、スプリント、プライオメトリックスなどの瞬発的な動作を行い、これをコンプレックストレーニングの1セットとします。理想的には、競技に必要な動きを用います。セット数はシーズン前で3−4セット、シーズン中には2セットほどを行います。
レスト セット間のレストは3−5分ほど取って、筋肉や神経系がしっかりとリフレッシュされた状態で行います。
種目数 シーズン前 5種目ほど、シーズン中 3種目ほど


 
ドリル例
1.スクワット / 垂直跳び
スクワットの後に、垂直跳びを行います。垂直跳びの際に、胸を張ってひざを屈めて、真上に跳びます。これを8回ほど全力で行います。
垂直とび
2.ステップアップ / アルタネート(交互)・バウンド
ステップアップを行った後に、アルタネート・バウンドを行います。ステップアップでは、直立姿勢のまま、台の上に乗ります。それから、スタートの状態にゆっくりと戻っていきます。アルタネート・バウンドでは、片足ずつ交互にできるだけ遠くに飛ぶように、ジャンプをしていきます。30−50メートルほど行います。
ステップアップ
1. 2. 3.
アルタネート・バウンド
3.サイドランジ / サイド・ニー・タック・ジャンプ (または片足サイドジャンプ)
サイドランジを行った後に、サイドジャンプを行います。サイドランジでは、胸を張って、背中を丸めないように行います。足を開く開き、ひざをつま先の上に来るまで曲げていきます。サイドジャンプでは、着地の際にバランスを崩さないように、安定した状態で行います。左右交互10回ずつ行います。
サイドランジ
サイド・ニータック・ジャンプ
片足サイドジャンプ
4.ハムストリングカール / ヒールキック
ハムストリングカールの後、ヒールキックを行います。ヒールキックでは、上体が後傾しないように、踵をお尻につくまで素早く上げて行います。20−30メートルほど行います。
ハムストリングカール
ヒールキック
5.デッドリフト / ストレートレッグ・バウンド
デッドリフトを行った後、ストレートレッグ・バウンドを行います。ストレートレッグ・バウンドでは、ひざを伸ばしながら、大股で前進していきます。このときも上体は、後傾しないように気をつけてください。30−50メートルほど行います。
デッドリフト
ストレートレッグ・バウンド
6.チェストプレス / シングルハンド・メディシンボールトス
チェストプレスを行った後に、シングルハンド、メディシンボールトスを行います。シングルハンド・メディシンボールトスでは、スタートの姿勢では、股関節、体幹をしっかりと捻り(ローディング)、上半身だけではなく、全身を使って投げるようにします。3−5キロほどのメディシンボールを用いて、10回ほど行います。
チェストプレス
シングルハンド・メディシンボール・トス
7.ケーブル・ツイスト / ゴルフスイング、野球のバットのスイング
ケーブル・ツイストを行った後に、今度はそれぞれの競技のスイングを行います。野球であれば、バットを使って、またはゴルフであれば、ゴルフクラブを使って行います。ケーブルツイストでは、上半身だけを使ってケーブルを引くのではなく、下半身と体幹を使って、ケーブルを引っ張るようにします。
ケーブル・ツイスト
実際のスイング
8.ダンベル・ロー / チュービング・シングル・ハンド・ロー
ダンベル・ローを行った後に、チュービング・シングル・ハンド・ローを行います。チュービング・シングル・ハンド・ローでも、上半身だけを使ってチュービングを引っ張るのではなく、しっかり股関節、体幹で捻りながら全身で引っ張るように行うようにします。10−12回ほど行います。
ダンベル・ロー
チュービング・シングルハンド・ロー
9.ダンベル・プルオーバー / メディシンボールオーバー・ヘッド・パス
ダンベル・プルオーバーを行った後に、オーバーヘッドメディシンボールトスを行います。オーバーヘッドメディシンボールトスでも、スタートのし姿勢で股関節から胸をしっかりと張り(ローディング)、全身を使ってメディシンボールを投げるようにします。8−10回ほど行います。
プルオーバー
メディシンボールオーバーヘッドスロー
 

ここで紹介したのは、ドリルのほんの一部ですが、このほかにいろいろな組み合わせによって、それぞれの競技種目特性にあったトレーニングを効率的に行うことができます。瞬発的な種目(レジスタンストレーニングの後の補助種目)を考える際に、できるだけ部位だけを使うドリルよりも、全身との協調性を重視したドリルを選ぶようにしてください。

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2005/01 第21回
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2004/10 第20回
「ファンクショナルストレッチ1 ―アクティブストレッチ―」
2004/09 第19回
「パワートレーニング ―コンプレックストレーニング―」
2004/08 第18回
「足首捻挫のファンクショナルリハビリテーションプログラム」
2004/07 第17回
「腰部のメインテナンスプログラム」
2004/06 第16回
「ショルダーメインテナンスプログラム」
2004/05 第15回
「ウォームアップのバリエーション」
2004/04 第14回
「ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(パート2)」
2004/03 第13回
「ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(パート1)」
2004/02 第12回
「マトリックスバランスドリル(パート2)」
2004/01 第11回
「マトリックスバランスドリル(基礎編)」
2003/11 第10回
「ダンベルマトリックス −上半身、下半身−」
2003/10 第9回
「フォームローラードリル」
2003/8 第8回
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「チュービングドリル」
2003/6 第6回
「ミニバンドドリル」
2003/5 第5回
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2003/4 第4回
「ミニハードルドリル」
2003/3 第3回
「メディシンボールドリル」
2003/2 第2回
「バランスボールドリル - 上半身、下半身トレーニング」
2003/1 第1回
「バランスボールドリル - 体幹トレーニング」


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