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Training Drill
友岡和彦の競技者のためのトレーニングドリル
第10回 「ダンベルマトリックス −上半身、下半身―」

ダンベルマトリックス −上半身、下半身―

その前に

 今回はダンベルを使った機能的な要素を強調したダンベルエクササイズを紹介したいと思います。 まず、ドリルについて詳しく説明する前に、下半身のランジドリルをダンベルマトレックスとして紹介したファンクショナル(機能的)トレーニングの 第一人者であるGary Grayのこの約20年間、ひとりでも多くの人たちの生活向上に向けてがんばってきた彼の熱意に感謝したいと思います。 そして、最近ではボランティアで地域の子供たちに勝ち負け関係のないスポーツの楽しさ、健康であることの大切さを訴え続けてきた彼の働き、そして彼の まったく自我のないプロフェッショナルな姿勢に頭が上がりません。現在自分がやっていること、やれることの小ささにも気づかされてしまいます。 彼のこうした努力がアメリカだけではなく、日本でも広まって、子供から老人の方の生活に少しでもインパクトを与えられればと思っています。 私自身トレーニングコーチとして、狭いトレーニング理論、グループ・派閥、金銭面に束縛されずに、原点に戻って本当の目的であるアスリートのための トレーニング、さらにはそこから生活の質の向上のために年齢に関係なく、一般の方が生涯を通して楽しくスポーツを行えるように手助けできればと思っています。 (私は、現在日本に一時帰国していますが、いろいろなトレーナー、トレーニングコーチ、またトレーニング関係の会社のうわさを聞くことがありますが、 いくらその方たちが優れた知識・技術を持っていても、裏で自分の名声や目先のお金に振り回されているということを聞くと残念に思ってしまいます。)
 話がそれてしまいましたが、今回はGary Grayのマトレックスドリルとその応用、そしてこれを上半身に応用したドリルをまとめて、ここでは総称して ダンベルマトレックスドリルとして紹介したいと思います。ドリルをあげる前に、いつものようになぜ行うのかについて説明しようと思います。


マトリックスドリルの特徴
  1. ローディング(Loading)・アンローディング(Unloading)

  2.  ここではできるだけ簡単に説明して、詳しい説明に関しては、後日触れたいと思います。 わかりやすく説明すると、ローディングが「力を溜めること」、アンローディングが「溜めた力を発揮する」ということです。 スポーツの動作だけではなく、日常動作でほぼすべての関節で、常にこのローディングとアンローディングが繰り返されて行われています。 歩行を例にとって見ましょう。歩行では、足が地面について体を支えている期間をローディング期となります。 そして足が地面を蹴って重心を前方に移動させる期間をアンローディング期とします。 そしてほんの一瞬ですが、このローディング期とアンローディング期の間に移行期が存在します。 歩行中の下半身のアンローディング期の足首の関節では回内(外反、背屈、内転), 膝関節では、脛骨の内転、外旋、屈曲、 そして股関節では大腿骨の内転、屈曲、内旋動作が起こります。これは歩行中の体で起こるリアクションのほんの一部です。 このほかに背骨、肩甲骨、肩関節、肘などでもちろんローディングが起こっています。これが生きている人間の本来の機能であり、 これまで私たちが学校で習ったような、死体を使って人間の筋肉の動きを載せた教科書とでのギャップがあります。 この意味で私たちは機能的な人間の動きにおいては、あまりわかっていないのではないでしょうか。 教科書では、膝の伸展は大腿筋を使うということが言われていますが、実際の歩行やランニング動作ではひらめ筋、腓腹筋、後脛骨筋,腸腰筋などの ローディングとアンローディングの動作が大きく関係してきます。さらに前十字靭帯の予防として膝周りの筋力がとても重要だと習ってきましたが、 実際のスポーツの動作を見ていると、腹斜筋が正しく機能することが、障害予防に重要な役割を果たすこともあります。 (これらの詳しい説明にはかなりのスペースを必要とするので、後日紹介したいと思います。) これらのことを考慮すると、当然「最新のマシンを使って、関節をしっかりと固定して、筋肉1つ1つを鍛える」事で、 フィットネストレーニングと 言う意味では、よいドリルがたくさんがありますが、機能性という量りにかけた場合にはそれほど役に立たないものも多くあります。 重力が存在している限り、アンローディングとローディング期が存在していて、重力や慣性の力という要素を無視してトレーニングを行うことはできません。 そこで重力、グランドリアクション(Ground Reaction)、慣性の力の要素を考慮して、トレーニングを考える必要が あります。

  3. 協調動作・チェーンリアクション:Singing vs Screaming

  4.  以前チェーンリアクションの章で説明しましたが、人間の体はそれぞれの部位が強調しながら動いています。 上で紹介したように、ある部位がしっかりとローディングをできていなければ、それを他の部位で補おうとします。 これを続けることによって、関節、筋肉、腱等に負担を与え慢性的な障害につながります。 野球などではバッティングでもピッチングでも股関節の使い方が重要だといわれていますが、もし股関節でしっかりとローディング動作が行われていなければ、 それが肩のローテーターカフに傷害を起こすことがあります(この場合いくらインナーマスルのトレーニングをしても一時的なものになってしまいます)。 筋肉には感覚器として働く頭脳のようなのもがあり、いつも部位でトレーニングを行っていると、それが学習されてしまい、 いざスポーツや日常生活で全身運動を行うと関節どうして協調して動くことができなくなります。 そこで全身を使った協調動作をトレーニングします。協調動作の場合ここの筋肉が動いていることを感じないため使っているように感じられないかもしれません。 それに対して、ボディービルダーのようなトレーニングでは筋肉を個別に鍛えるため、筋肉がはって使っているという実感があります。 確かにMRIを使っても、個別に鍛えたほうが筋肉を使っていることを示します。 これは、協調動作の場合の他の筋肉とともに協力し合ってMRIではそれぞれの筋肉がハーモニーよく歌っている(Sing) のかもしれません。それに対して、個別に鍛えた場合には、ひとつの筋肉がこのように叫んで(Scream)聞こえるのかも しれません。もしかしたら筋肉は、「俺たちの他の友達はどこだ!!俺だけを使ってこんな動きをさせるな!!ここから出してくれ!!」と叫んでいるのかも しれませんね。 当然このような一つ一つの筋肉を使った動作ばかりを行っていれば、筋肉同士が強調しあって動くことを忘れてしまうかもしれません。 肩のトレーニングであれば、肩関節回りの筋肉個々を鍛えるだけではなく、肩関節、肩甲骨、脊椎、骨盤、下半身を使ってドリルを行います。

  5. 3面性

  6.  人間の動きは矢上面、前額面、水平面の3面で起こり、トレーニングでもこれらの面すべてを使わなければいけません。 矢上面の1面だけで動いているように見える膝関節でも、しっかりと3面を使って動いています。 サイベックスなどの器具をアイソキネティック的な動き(等速運動)を使って、単関節で行う膝のリハビリやテストだけでは当然限界が出てきてしまいます。

  7. 重心移動

  8.  重力が存在する限り人間の体はそれに対して、重心をうまく移動させることによって、体のバランスを 取らなければいけません。 バランスというと一言で片付いてしまいますが、体のバランスを保つためには小さな筋肉が互いに協調しあって、関節をうまく固定させなければいけません。 これは単に静止状態に限らず、動いているときでも、筋肉はうまく伸び縮みして関節のダイナミックな動きを固定させなければいけません。 これをGary Grayは、Mobility(可動性) とStability(安定性)を合わせたMostabilityと呼んでいます。 重心移動を効率的に行う際には、このバランスが大変重要になってきます。

   
ドリル例

 ここでは、上の4つの要素を考慮して上半身、下半身のダンベルエクササイズを紹介します。 まずは動作に慣れるために、ダンベルを使わずに自体重で行いましょう。それから0.5キロから1.5キロほどのダンベルを使って行います。


■上半身マトレックスエクササイズ■

1. 肩甲骨 (Scapula )マトレックス
肩甲骨が矢上面、全額面、水平面で、足から背骨までの関節で、 単に肩甲骨を引き寄せるドリルを行うだけに終わらずに、伸張反射を使ったローディング、 アンローディングの動作を行って、お互いに協調運動を行っていることに注意してください。
前額面
右足に重心をのせて(右足のローディング)、それから右足に重心を移します (右足のアンローディング)。それに合わせて方を上に上げます。

前額面
右足のローディング、アンローディングに合わせてダンベルを後ろで 横方向に動かします。このときダンベルを無理に動かそうとするのではなく、リラックスして重力と慣性にまかせて腕を動かします。

矢上面
右足のローディング、アンローディングに合わせてダンベルの頭上で 前後に小さく動かします。このときもなるべく重力と慣性で腕を動かすようにします。

矢上面
上のドリルと同じ要領で、今度は腕を下で前後に動かします。

3面
左足のローディング(屈曲、内旋、内転)から、アンローディング(伸展、外旋、外転)に移っていきます。 このとき肩甲骨を引っ張るようにダンベルを上げていくのですが、 肩甲骨回りの筋肉を使って引っ張るよりも、下半身を使ってあげていくことを意識してください。

さらにに肩甲骨の柔軟性を出すときには、パートナーが肩甲骨の端を肩甲骨の動く方向に押してあげる事もできます。


2. ラテラルレイズ・マトレックス
 これも同様に、肩の三角筋だけを使ってダンベルをあげるのではなく、 左足のローディングからアンローディングによって骨盤を回転させながら、重力と慣性を使ってダンベルを肩の高さまで持ち上げます。 肩の三角筋は、悲鳴を上げる代わりに、ほかの筋肉と共同で作業をしているので楽しく歌っている感じがしませんか? (先日、日本でこれを近くのジムで行っていたところ、あるパーソナルトレーナーの方に体は固定して動かさないようにと注意されてしまいました。 (笑))


3.コンボ(ショルダープレス+二頭筋)・マトレックス1
 これも下半身を使って、対角線の斜め上に向けてダンベルを上げます。 これに下半身の動きに伴って、上腕二頭筋のカールとショルダープレスをコンボで入れています。


4. コンボ・マトレックス2
 これも下半身をしっかりと使って、ダンベルを斜め上に上げます。 理想的にはこのとき右手と左手はお互いに人間の自然な動きである対称動作(この場合、右の腕と左の腕が対称的な動きをしています)を行います。


5. バイセプス・メトリックス
  体を固定してバイセプスカールを行うのではなく、 下半身のローディング・アンローディングを用いて骨盤を回転させて慣性の力を使ってダンベルを上げます。



■下半身ダンベルランジマトレックス■

  このときの上体は、前に股関節から倒します。 これは教科書に載った直立をして行うランジよりもさらに殿筋を使います。 普段の動きでは、大腿筋とを個別の使って行う動作はそれほどなく、殿筋と協調しあって一連の動きを作っていきます。 大腿筋と殿筋が一緒にリズムよく歌っている感じがしませんか?
(フロント、サイド、−45°、135°、リバース、225°)
スタートの姿勢 右足フロントランジ 右足サイドランジ
右足135度斜め後ろランジ 右足リバースランジ(後ろ)
足225度斜め後ろランジ 右足−45度斜め前ランジ



■バリエーション■

 協調運動を使って、上体を後ろにそらすことによって、 殿筋の働きを抑えて、さらに大腿筋を個別に鍛えることもできます。このように個別に筋肉を鍛えるにしても、マシンを使うほかに、 協調運動の中で行うことができます。そのほかに体の姿勢を変えることによって、他の筋肉を刺激することができます。 そのためダンベルマトリックスには無数のバリエーションがあります。
スタートの姿勢 右足フロントランジ
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「ファンクショナルストレッチ1 ―アクティブストレッチ―」
2004/09 第19回
「パワートレーニング ―コンプレックストレーニング―」
2004/08 第18回
「足首捻挫のファンクショナルリハビリテーションプログラム」
2004/07 第17回
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2004/06 第16回
「ショルダーメインテナンスプログラム」
2004/05 第15回
「ウォームアップのバリエーション」
2004/04 第14回
「ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(パート2)」
2004/03 第13回
「ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(パート1)」
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「マトリックスバランスドリル(パート2)」
2004/01 第11回
「マトリックスバランスドリル(基礎編)」
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「ダンベルマトリックス −上半身、下半身−」
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「メディシンボールドリル」
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