- ローディング(Loading)・アンローディング(Unloading)
ここではできるだけ簡単に説明して、詳しい説明に関しては、後日触れたいと思います。 わかりやすく説明すると、ローディングが「力を溜めること」、アンローディングが「溜めた力を発揮する」ということです。 スポーツの動作だけではなく、日常動作でほぼすべての関節で、常にこのローディングとアンローディングが繰り返されて行われています。 歩行を例にとって見ましょう。歩行では、足が地面について体を支えている期間をローディング期となります。 そして足が地面を蹴って重心を前方に移動させる期間をアンローディング期とします。 そしてほんの一瞬ですが、このローディング期とアンローディング期の間に移行期が存在します。 歩行中の下半身のアンローディング期の足首の関節では回内(外反、背屈、内転), 膝関節では、脛骨の内転、外旋、屈曲、 そして股関節では大腿骨の内転、屈曲、内旋動作が起こります。これは歩行中の体で起こるリアクションのほんの一部です。 このほかに背骨、肩甲骨、肩関節、肘などでもちろんローディングが起こっています。これが生きている人間の本来の機能であり、 これまで私たちが学校で習ったような、死体を使って人間の筋肉の動きを載せた教科書とでのギャップがあります。 この意味で私たちは機能的な人間の動きにおいては、あまりわかっていないのではないでしょうか。 教科書では、膝の伸展は大腿筋を使うということが言われていますが、実際の歩行やランニング動作ではひらめ筋、腓腹筋、後脛骨筋,腸腰筋などの ローディングとアンローディングの動作が大きく関係してきます。さらに前十字靭帯の予防として膝周りの筋力がとても重要だと習ってきましたが、 実際のスポーツの動作を見ていると、腹斜筋が正しく機能することが、障害予防に重要な役割を果たすこともあります。 (これらの詳しい説明にはかなりのスペースを必要とするので、後日紹介したいと思います。) これらのことを考慮すると、当然「最新のマシンを使って、関節をしっかりと固定して、筋肉1つ1つを鍛える」事で、 フィットネストレーニングと 言う意味では、よいドリルがたくさんがありますが、機能性という量りにかけた場合にはそれほど役に立たないものも多くあります。 重力が存在している限り、アンローディングとローディング期が存在していて、重力や慣性の力という要素を無視してトレーニングを行うことはできません。 そこで重力、グランドリアクション(Ground Reaction)、慣性の力の要素を考慮して、トレーニングを考える必要が あります。
- 協調動作・チェーンリアクション:Singing vs Screaming
以前チェーンリアクションの章で説明しましたが、人間の体はそれぞれの部位が強調しながら動いています。 上で紹介したように、ある部位がしっかりとローディングをできていなければ、それを他の部位で補おうとします。 これを続けることによって、関節、筋肉、腱等に負担を与え慢性的な障害につながります。 野球などではバッティングでもピッチングでも股関節の使い方が重要だといわれていますが、もし股関節でしっかりとローディング動作が行われていなければ、 それが肩のローテーターカフに傷害を起こすことがあります(この場合いくらインナーマスルのトレーニングをしても一時的なものになってしまいます)。 筋肉には感覚器として働く頭脳のようなのもがあり、いつも部位でトレーニングを行っていると、それが学習されてしまい、 いざスポーツや日常生活で全身運動を行うと関節どうして協調して動くことができなくなります。 そこで全身を使った協調動作をトレーニングします。協調動作の場合ここの筋肉が動いていることを感じないため使っているように感じられないかもしれません。 それに対して、ボディービルダーのようなトレーニングでは筋肉を個別に鍛えるため、筋肉がはって使っているという実感があります。 確かにMRIを使っても、個別に鍛えたほうが筋肉を使っていることを示します。 これは、協調動作の場合の他の筋肉とともに協力し合ってMRIではそれぞれの筋肉がハーモニーよく歌っている(Sing) のかもしれません。それに対して、個別に鍛えた場合には、ひとつの筋肉がこのように叫んで(Scream)聞こえるのかも しれません。もしかしたら筋肉は、「俺たちの他の友達はどこだ!!俺だけを使ってこんな動きをさせるな!!ここから出してくれ!!」と叫んでいるのかも しれませんね。 当然このような一つ一つの筋肉を使った動作ばかりを行っていれば、筋肉同士が強調しあって動くことを忘れてしまうかもしれません。 肩のトレーニングであれば、肩関節回りの筋肉個々を鍛えるだけではなく、肩関節、肩甲骨、脊椎、骨盤、下半身を使ってドリルを行います。
- 3面性
人間の動きは矢上面、前額面、水平面の3面で起こり、トレーニングでもこれらの面すべてを使わなければいけません。 矢上面の1面だけで動いているように見える膝関節でも、しっかりと3面を使って動いています。 サイベックスなどの器具をアイソキネティック的な動き(等速運動)を使って、単関節で行う膝のリハビリやテストだけでは当然限界が出てきてしまいます。
- 重心移動
重力が存在する限り人間の体はそれに対して、重心をうまく移動させることによって、体のバランスを 取らなければいけません。 バランスというと一言で片付いてしまいますが、体のバランスを保つためには小さな筋肉が互いに協調しあって、関節をうまく固定させなければいけません。 これは単に静止状態に限らず、動いているときでも、筋肉はうまく伸び縮みして関節のダイナミックな動きを固定させなければいけません。 これをGary Grayは、Mobility(可動性) とStability(安定性)を合わせたMostabilityと呼んでいます。 重心移動を効率的に行う際には、このバランスが大変重要になってきます。